レベルエンター山本大のブログ

面白いプログラミング教育を若い人たちに

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机に向かって取れる解決法だけを並べて「限界だ」なんてあきらめてないか?


プロジェクトで発生する様々な問題の答えは、IT技術や開発の方法論だけではありません。
問題解決のためには、あらゆる手段を視野に入れてのぞむ必要がありますが、
僕らエンジニアは「あらゆる手段」を狭く取りすぎていることがあります。


「あらゆる」と言いながら、机の前、パソコンの前に座って取れる方法だけにとらわれていたことが
僕自身にもありました。



そのプロジェクトのエンドユーザーさんはとても田舎の工場で、
僕が勤務してた大阪の市内からは、車で行って2時間(高速代などで10000円)、
電車で行くと2時間40分(片道3000円)かかるところにある、
なかなか厳しい立地条件のお客さんでした。


僕はこの案件で、要件定義から参画しましたが、
ミーティングをするために、客先に出向いても往復に4時間以上かかるので
せいぜい3時間しかミーティングの時間が取れません。
このため時間的にもお金的にも、ミーティングの機会は週に1回が限度でした。


要件定義を進めるうちに、この立地条件の悪さが以外と厳しく響いてくることを思い知りました。
ITに強くないお客さんだったので、メールや電話だけでは、途方もない認識齟齬の応酬となります。


「このまま行くと要件定義は、少なくとも1ヶ月は伸びそうです」


僕らはそう、上司に報告せざるを得ませんでした。


「あと3回ミーティングを行い、4週間で新業務フローをまとめます」

と報告しましたが


それに対して上司はブチ切れながら言いました。

あと3回?伸びること自体も腹立たしいが、

そんなやり方してて、本当にいまからあと3回のミーティングでまとまると思ってるんか?

俺が思うに、今お前らに任せてたら2ヶ月あっても間に合わん。

ビリビリするような苛立ちを放ちながら、上司は続けました。

俺なら、あと1週間で新業務フローまとめるところまで完成させられる。


でも、僕としてはどれだけ上手くやっても

この立地条件とお客さんのミーティングタイミングを考えると不可能だと考えていました。

これは、僕に発破をかけるためのブラフだと思っていました。

そんな僕の考えを見透かして、上司は続けました

嘘やと思ってるやろ。俺は真剣やぞ。

証明してやろう、今から指揮権剥奪じゃ。

さて、どういう手を使えばたった1週間でこの状況を打破することができるというのか、

僕は叱られたことの悔しさよりも好奇心にかられていました。


その打ち手を聞いて、僕は自分の甘さを恥じました。

いまから4日間、向こうでホテルを取って、

朝から晩までカンズメになって、ヒアリングしまくってこい。


「その手があったか、、、」と敗北感に打ちひしがれました

恥ずかしい話ながら、当時の僕はそんな単純なことに気づかなかったのです。

確かに、距離と時間がネックだと分析できているならば

シンプルにそれを解決すればいいだけの話なのです。


僕は、アジャイルやWebツール、分析手法など

いろんな方法を用いて効率良く要件定義を進めようとしていましたが、

物理的距離を縮めるために「出張する」という、もっとも安易な方法には発想がいたりませんでした。


結局、デスクワークのエンジニアとしての変な常識から抜け出せなかったということです。


要件定義をして、顧客の問題を分析して解決しようというエンジニアが

この調子では先が思いやられるというものです。

この上司には色々と叱られましたが、成長させてもらったと思います。



このときからITにかかわらずすべての手法、可能性を考えて問題に立ち向かうように心がけています。

机に向かわずに取れる解決法を視野に入れて考え直すようにすると、

意外な手によって、あっと驚くような解決法を見出すことに楽しみを覚えるようになりました。


こういった視野は、プロジェクトマネジメントなど責任のある立場の人には求められるのだと思います。