http://www.amazon.co.jp/dp/4822282910
アラン・M・デービス (著), 萩本 順三 (監修), 安井 昌男 (監修), 高嶋 優子 (翻訳)
デマルコ絶賛!
要件定義の本はたくさんあるが、そういった本を読んだ上で
要件定義の工程を幾度か経験すると、
様々な本の言葉に惑わされていると感じることがある。
この本は、そんなとまどいに答えてくれる実践的な要件定義のための本だ。
一般的な要件定義
「要求とは実現方法を定義することではなく、システムが何をすべきかを
定義するものである。」。しかし、この「どうやって(How)ではなく、何を(What)」という
おなじみの定義には、落とし穴がある。たとえば、私たちがアナリストのグループで、
あるホテルのマネージャーが協力を求めてきたとしよう。
そこで、何を求めているのかと尋ねると、
マネージャーは「電話システムが欲しい」と答える。
うまく要件定義が出来たことを褒めてあげていいだろう。
マネージャーはハッキリと「どうやって」それが機能するか
(『このボタンを押して、外線を発信する』)ではなく、
「何」が欲しいか(電話システム)を定義したからだ。しかし、「なぜ」そのような電話システムが欲しいかと聞いたら、こう答えるだろう。
「うーん、実際に欲しいのは、すべての宿泊客のための通信手段なんだ。
電話システムそのものが欲しいというわけじゃない。」
そうなると、「何」が通信手段であり、「どうやって」が電話システムであるといえる。
さらに、「どうして通信手段がほしいのか」と尋ねると、こう答えるだろう。
「宿泊客を満足させたいからだ」。
これで「何」が「宿泊客を満足させること」であり、
「どうやって」が「通信手段」であるといえる。
さらに、「どうして宿泊客を満足させたいか」と質問すれば、
「宿泊客にまた利用してもらいたいから」と答えるだろう。
これで「何」が「宿泊客をリピーターにすること」であり、
「どうやって」が「顧客を満足させること」になる。
この質疑応答を繰り返していけば、
最終的にはアブラハム・マズローの要求階層へと行き着く。すでにおわかりのとおり、あたらに「なぜ」と聞くたびに、
その前の「なぜ」に対する答えが「何」になり、
要求に思えていた物がじつは要求ではなくて「どうやって」に思えてくる。
上記の落とし穴に対して、この本では、要求を挙げるときに以下の2点を満たしていることで要求と認めることを提唱している。
- 1)その要求が実現されていることを、システムの外側からみてわかること
- 2)その要求が、システムを使うことになる顧客やステークホルダー(利害関係者)の何らかのニーズを満たすのに役立つこと。
この定義のほうが、より実践的で必要十分であると思う。
まさに、この本の原題は「Just Enough Requirements」であり、「ぴったりな要求」と訳せるのだ。
要件定義レベルをやるなら必読!