レベルエンター山本大のブログ

面白いプログラミング教育を若い人たちに

BLOCKVROCKリファレンス目次はこちら

無料時代を生きるエンジニアの常識:「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」書評

2009年初版の本だから、この業界の話題としては少し古い本になってしまいましたが、最近読んだビジネス書の中で最も面白かったのでエントリにまとめます。

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

この本では「無料」にかかわる新常識がまとまっています。
おススメする点は、無料モデルについての基礎的で具体的で体系的な整理ができることです。

インターネットに関するスキルを持った者であれば誰でも、今後重要な基本知識となると思います。
インターネットを使ったビジネスに取り組もうと思っている or 取り組んでいる経営者はもちろんですし、エンジニアも知っておくべき基礎知識ではないかと考えています。

このブログでも述べさせてもらっているように、エンジニアがキャリアパスを考えるうえでゴールにするべきだと思うのは、代表作と呼べる何かを持つことです。
結局ギークでスーツが最強だろう。エンジニアキャリアパスの行き着く先には経営が待ってる - 山本大の日記

「無料」のものをビジネスモデルに取り入れてなおビジネスとして成り立たせるには、どうしても規模の経済になると思っていましたが、
本書の巻末付録3に、「フリーを利用した50のビジネスモデル」ということで、規模抜きにも創造性を発揮してうまくいっているフリーのビジネスモデルがたくさん紹介されています。
本編中にももちろんたくさんの無料を中心としたビジネスモデルが詳しく書かれていて、これだけでもいろんなアイデアの呼び水にすることができそうです。

この本が発行されてから3年たった現在では、ソーシャルゲーム等で無料利用+アイテム課金のようなヴァーチャルな世界の創造物に課金するという仕組みと、射幸心をあてにしたビジネスモデルが隆盛となっています。
そのモデルの良し悪しは別としても、創造的なビジネスモデルであることは否めないのではないでしょうか?
どうやって儲けるのか?という問いに「無料」を取り入れることは、これからビジネスモデルを考えていくには、切り離せないと思います。

本書によって、どういうことを考えて過去の無料ビジネスモデルが成立していったのかがわかります。
その延長線上に、より新しいビジネスモデルがあるかどうかは不明ですが、少なくとも考えるヒントにはなると思います。

本書では、無料を中心にしたビジネスモデルを以下の5つに分類しています。

■フリー1:直接的内部相互補完
 ・ウォルマートが「DVDを1枚買えば2枚目はタダ」というキャンペーンなど。(P34)
■フリー2:三者間市場
 ・メディアが制作物をタダかそれに近い価格で消費者に提供し、そこに参加するために広告主がお金をはらうなど。
■フリー3:フリーミアム
 ・少数の有料利用者が多くの無料利用者を支えるモデル(P.39)
■フリー4:非貨幣市場
 ・贈与経済:ウィキペディアは評判や注目を人々の動機づけにしている。
 ・無償の労働:グーグル(クリック行為が検索精度を上げる労働となっている)
■フリー5:不正コピー
 ミュージシャンのなかでは、オンラインをマーケティング手段として割り切り無料で楽曲を配信する者が出てきた。

これからこの分類に当てはまらない突拍子もない創造的なビジネスモデルが出てくることもあるだろうけれど、
現時点で無料ビジネスモデルの市場の広さがわかることもビジネスモデルを考えるうえで大事なことではないかと思っています。