希代の名著登場!ビジョナリーカンパニー4は必読
ビジネス書の中で僕の今までの最高に影響を受けた本は、ビジョナリーカンパニー2でしたがビジョナリーカンパニー4はそれを越えたかもしれません(今、読んでる途中なので暫定です)。
ビジョナリーカンパニー4
- 作者: ジム・コリンズ,モートン・ハンセン,モートン・ハンセン共著,牧野洋
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/09/20
- メディア: 単行本
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ビジョナリーカンパニーシリーズに共通しているテーマは「偉大な組織」です。偉大な組織となり得る要因を膨大なデータ検証に基づいて研究している点が特徴です。
単なる考察や経験則からの見解とは異なっていて説得力があります。
この本では、同じように不確実な環境下におかれながら偉大になった企業と偉大になれなかった企業を1組ごとに対比させる構成をとっています。
こうやって対比することで、特定の企業が不確実な時代に成功を収める要因を探っています。
この本では勝者側の企業を10X(10倍)型企業と命名しています。こういう企業は所属業界の株価指数を少なくとも10倍以上上回る株価パフォーマンスをだしているからだそうです。
著者の主観を排除することは不可能とはいえ、膨大なデータの分析から見えてくる見解というものは、一般的な神話を大きく覆す結果であることも多いです。
この点が一番に興味を惹かれたので、原文を抜粋します。
神話:
大混乱する世界で成功するリーダーは大胆であり、進んでリスクを取るビジョナリー。
意外な現実:
我々の調査対象になった10X型リーダーは、未来を予測できるビジョナリーではない。
「何が有効なのか」「なぜ有効なのか」を確認し、実証的なデータに基づいて前に進む。
比較対象リーダーよりリスク志向ではなく、大胆でもなく、ビジョナリーでもなく、創造的でもない。
より規律があり、より実証主義的であり、よりパラノイア(妄想的)なのである。
神話:
刻々と変化し、不確実で混沌とした世界で10X型リーダーが際立つのはイノベーションのおかげ
意外な現実:
驚いたことに、イノベーションは成功の鍵ではない。確かに10X型企業も多くのイノベーションを起こす。
しかし、我々の調査では「10X型企業が比較対象企業よりもイノベーション志向である」という前提を裏付けるデータは出てこなかった。
10X型企業が比較対象企業よりもイノベーションで劣るケースさえあった。我々の予想に反し、イノベーションだけでは切り札にならないのだ。
より重要なのは、イノベーションをスケールアップさせる能力、すなわち創造力と規律を融合させる能力である。神話:
脅威が押し寄せる世界ではスピードが大事。「速攻、そうでなければ即死」ということ。
意外な事実:
環境が急変する世界では、素早い判断と素早い行動が求められるから、「どんなときでも即時・即決・即行動」という哲学を取り入れる、、これは破滅を招く効果的な方法だ。10X型リーダーはいつアクセルを踏み、いつ踏んではならないかを理解している。
神話:
外部環境が根本的に変化したら自分も根本的に変化すべき。
意外な事実
外部環境が急変しても、10X型企業は比較対象企業ほど変化しない。劇的変化に見舞われて世界が揺れ動いたからと言って、自分自身が劇的変化を遂げる必要はない。
神話:
10X型成功を達成した偉大な企業は多くの運に恵まれている
意外な事実:
全体として見ると、10X型企業が比較対象企業よりも強運であるとは限らない。
幸運だろうが不運だろうが、10X型企業も比較対象企業も共に同じ程度に多くの運に遭遇している。
成功の鍵を握っているのは、運に恵まれているかどうかではなく、遭遇した運とどのように向き合うか
不確実性の時代に自分で偉大になるというテーマの捉え方も面白いですが、結論として運やひらめきではない部分が
とても重要であることが読み取れて、心強く感じます。
行動指針として、とても参考にできる本なので強くお勧めです。
最近読んだ本についても、書評します。
ヤバい経済学
- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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「ヤバい経済学」も膨大なデータから分析するという点で、ビジョナリーカンパニーに通じるところがあるのですが、分析視点の独自さ、視点の面白さが売りの本です。
その視点の面白さは、タイトルにも現れています。
・銃とプール、危ないのはどっち?
・相撲の力士は八百長なんてしない?
・学校の先生はインチキなんてしない?
・ヤクの売人がママと住んでいるのはなぜ?
・出会い系サイトの自己紹介はウソ?
・ウィキペディアは信頼できる?
内容も雑学と割り切れば楽しく読めるものでした。
データというものをどういう視点で見るか?どういう視点で集めるか?そのデータから何を読み取るか?によって、世の中の見え方は大きく変わってくるということがわかります。
特に「因果関係」と「相関関係」という言葉からいろいろ気づきをもらいました。
「因果関係」と「相関関係」は混同しやすく、時には恣意的に混同してデータから事実無根の対策を生み出すことがあります。
これは身近にも身に覚えがあります。
犯罪が多い地域には、警察官が多い。だから警察官を減らせば犯罪が減るんだ!
という、全く誤った対策が取られたという事例がありました。
極端ながらなんとなくわかるというか、もっと小規模な同様の間違いをしてしまってることもあるんじゃないかと思いました。
「インセンティブ」を中心に因果関係を読み解くという視点も、納得感のある内容でした。
特にインセンティブの味付けとして挙げていた3つが面白い
・道徳的インセンティブ(悪いとわかっていることをやりたくない)
・社会的インセンティブ(悪いことをするやつだと見られたくない)
・経済的インセンティブ(お金)
通常、経済的インセンティブのみを行動の動機付けだと考えて施策を打ちがちですが、確かにインセンティブにはいろんな目に見えないものがかかわっていますね。
行動心理学という要素なのでしょうか。この本に挙げられているのは3つのインセンティブだけでしたが、おそらくWebの利用者などの行動を分析したりすると、また違ったインセンティブが働くんじゃないかと思っています。
そういう視点の面白さがこの本の醍醐味ですね。
しかしながら、この本は分析内容に実益があるというものでもなく、あくまでも雑学的なおもしろさと、物事の見方、視点といった興味深さぐらいしか得られるものはなかったと感じます。
DVD化されているようなので、そっちで見て雑学と視点を感じてもらえれば十分かなと思いました。
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: DVD
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小さなチーム、大きな仕事
小さなチーム、大きな仕事〔完全版〕: 37シグナルズ成功の法則
- 作者: ジェイソン・フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン,黒沢 健二,松永 肇一,美谷 広海,祐佳 ヤング
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/01/11
- メディア: 単行本
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こちらは上記2冊とは異なり、どちらかというと著者の経験や視点をちょっと刺激的にまとめたものです。
切り口の明快さが歯切れよく、一般的によく言われることの逆説的なことを言い切っているところなども爽快で考察の切っ掛けになります。
僕はこういう本は基本的に好きです。
特に、僕らの会社は製品やサービス開発に取り組んでいて、この本で扱っているテーマがとてもフィットします。
とはいえ言い切り型の功罪で、やや独善的というか勢いだけの部分もなきにしもあらずですね。
この本で気に入った部分は以下のようなところ。
・「失敗から学ぶこと」は過大評価されている
・「起業家(アントレプレナー)」はもうたくさん
・中途半端な1つの製品ではなく、よくできた半分の製品
・顧客の声を書き留めてはいけない
・マーケティングは部署ではない
・解決策はそこそこのもので構わない
他にも面白い話題がたくさんあるので、一読して損はしません。
世間一般で最近言われている常識を盲信的に信じることをやめるためのカウンターパンチを浴びせるような内容があり、ストレートに得られる気づきも多いのですが、カウンターを食らって一度常識を覆して考えてみるのが面白いですね。
自分の過去の経験と照らし合わせることで浮かび上がる気づきもあります。
たとえば「解決策はそこそこのもので構わない」などは、気づきもしなかった妙なこだわりにカウンターパンチを食らわせてくれます。
良書なので僕はこの本に影響を受けましたが、とはいえ、この本を行動指針にしようというところまでは至らないかなと思いました。
他のビジネス書や一般論からすると逆説的なことを言い切っていたり、
一般論をばっさり切り捨てていたりするので歯切れがよいのですが、
賛否両論が分かれるところがあったり、前提条件や環境制約によって違う部分もあるなと
思ってしまう部分がありました。
影響を受けて自分の頭で考えるきっかけになり良書だと思いますが、座右の書とまではいかないかなと思いました。
その点、ビジョナリーカンパニー4から得られる気づきは、今後の行動指針/行動原則として飲み込むことが出来るぐらい説得力のある内容であり、やはりビジョナリーカンパニー4に軍配があがるのでした。
まぁ、テーマも違うし切り口も全く違うので比較するべきものでもないですね。
以上、ご参考までに