新人教育の中で集大成といえば、模擬開発を実際のプロジェクトさながらにチームを組んで取り組むというグループワークである。
今日は僕の教え子らの開発演習の成果発表に参加してきた。
この演習の中で最も重要なポジションを担うのは、PM役のメンバーだ。
右も左も分からない新人さんの中から、PMを決めてプロジェクトを進めるのだが、
模擬とはいえプロジェクト、PMさんたちの頭をなやませる多数の問題が発生する。
彼ら新米PMが共通して抱く、マネジメントという言葉への疑問は単純ながら奥深い問いだ。
「PMとは何をする人ですか?」
という問である。
長年問われ続けて僕の中には1つの解答がある。
その出だしは、
マネージャーには3つの機能がある、
「管理」と「経営」と「リーダシップ」である。
ということだ。
管理と経営とリーダシップ
マネージャーおよびマネージメントを、1つの側面で語ると誤る。
最もありがちで安易な間違いだと思うのは、マネージャーをただの進捗管理のおじさんだと定義付けることである。
進捗管理を、結局のところ何のためにやっているのかというと意思決定の情報集めのためである。
そいった意味で、「意思決定」は「管理」よりも重要なPMの機能だ。
意思決定を(飛躍を交えて)言い換えると、経営である。
経営という言葉で表される機能の1つは、意思決定・判断である。
管理は、経営のためにある。
さて経営の役割は、決定だけではない。
何が足りないかというと実行である。
実行が伴ってこそ経営。
実行に必要な機能とは?というところが次の話題につながる。
リーダーシップ
さて、少し確度の違う方向からPMの機能を見てみると。
PMの機能の1つは、複数の人を統率して実行し達成することだ。
一人きりのプロジェクトだったら、PMもへったくれもない。複数の人が関わって事をなすときにPMの重要度が高まる。
意思決定プロセス/意思決定結果や管理能力が優れていても、人がついてこないPMは多々いる。
そういう人に欠落している能力を、かいつまんで言うと「リーダシップ」である。
しかし、「リーダシップとは何か?」との問いに対しても突き詰めて考えてみるべきだ。
リーダーシップという言葉は、語る人によって表現も根幹も異なる。余りにも抽象的すぎて掴みどころがない。
リーダシップについて、多くの人が見解を述べているが果たして本質はどこにあるのか?
そういった疑問を晴らすべく、「リーダシップとは」とGoogle先生に訪ねてみるとWikipediaの以下のような文章を返してくれる。
リーダシップとは、多数の人間を一人の人間に従わせること、またはその技術と才能を指す。統率とも。英語における概念は統御のみを指す場合もある。
統御 - Wikipedia
「統率」と「リーダーシップ」はイコールだという。堂々巡りになってきた。
しかし、新たに「統御」という言葉が出てきている。
実は、僕は失われつつある日本語の1つ「統御」という言葉がPMの素質の3つ目を端的に表せる言葉だと考えている。
統率の要素(統制と統御)
やや繰り返しになるが、Wikipediaによるとリーダーシップ(=統率)は、大きく2つに分けることができる。
統制と統御である。
「統制」とは、管理的な面で計画実行に必要な資源を配分し、行動を監視することで合理性、能率の面で指導することである。
統制は、僕の言葉で言えば「管理」に該当する。
「統御」とは、心理的な要素を強化することで非合理的、精神的な面で任務遂行を指導すること
指揮官の、精神、人格、哲学、能力、率先、垂範、部下の理解などにより、部下が規律を守り、
士気を高め、団結を強め、積極的に指揮に従おうとするリーダーシップの1機能である。
なぜ統御という言葉が日本語から消えかかっているかといえば、帝国陸軍が好んだ言葉だからだろう。
まとめ
まとめる。
はじめに述べた
プロジェクトに限らずマネジメントには3つの機能がある、
「管理」と「経営」と「リーダシップ」である。
という言葉は、以下のように分解・整理できる。
┣経営
┣管理
┗リーダーシップ(≒統率)
┣統制 : 合理的 指揮機能(≒管理)
┗統御 : 非合理的 指揮機能
リーダーシップの機能の中から「統制」を「管理」に集約すると、
プロマネに求められる機能は「管理」「経営」「統御」となる。
「管理」機能により、情報を集めて整理する。
↓
その情報を「経営」機能たる意思決定に利用する。
↓
「経営」機能は意思決定のみにとどまらず、実行までが必要である。
↓
大勢の人間に実行の動機の1つを与える「統御」機能が備わっていると、大きな事を成し遂げやすい。
ということで、3つの機能を果たす人がプロマネだと僕は考えている。