レベルエンター山本大のブログ

面白いプログラミング教育を若い人たちに

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人は炎上案件ではなく、教育で育てるべきなのだ。

ござ先輩が荒ぶってる!いいぞいいぞ!

gothedistance.hatenadiary.jp

 

大元は、ソフトウェア開発者1000万プレイヤーへの近道として、「炎上案件を経験したらいいぜ」みたいな話をしたソフトウェア会社の代表の話で、前後関係はわからないけどこの発言が拡散されて本気にとらえる人も多いし有害だわな。そんなの生存者バイアスでしかないのは21世紀の常識で、もうそう言う体育会系ブラック企業みたいな発言が許される世界はない。

 

しかしあったなー。こういう世界。生き残れたやつだけを次の地獄に叩き込んで育てていく世界。

 

僕もそうやって死の淵から生き残ったクチだが。だからこそ、そういう人の育成をしてはいけないと思ってる。DVの親に育てられた子は、親になったときどう育てていいかわからなくなるのと似てるんだろう。負の連鎖を断ち切るべし。

 

人は炎上案件ではなく、教育で育てるべきなのだ。

 

ちょうど先日、1人に230万円という中小企業では破格の教育費をかけて人を育成する企業の話を聞いたところだった。フォーブスの記事になってる。

 

forbesjapan.com

 

かっこいい。

ちょっと引用してみます。

 

研修だけで1人に、「約230万円」の投資──大阪の中小企業が見せる、本気の変貌

ビジネスパーソンとしての意識、仕事の進め方。

それらは多くの場合、新卒で入社した企業や若手時代に勤めた企業で基礎が作られ、良くも悪くも長年、体に染み付く。だからこそ社員の未来を本気で考える企業は、育成に投資をする。

 

 ほんまに「社員の未来を本気で考える会社は育成に投資する。」やね。

フリーランスや副業が全盛となり、大企業のメリットが昔ほどなくなってきた個の時代にあって、会社組織に何ができるのかと言えば、人を育成して利益を回し、育ち・巣立った人たちとも経済圏を広げて共栄していくことじゃないかなと。

 

「優秀なプレーヤーが増える中でも、選ばれ続ける企業にならないといけない。そのためには、ただの制作会社やただのシステム開発会社ではいけません。海外企業に負けない強みを身に付け、海外企業と日本企業のハブのような存在になる必要がある。今こそ、未来への投資が必要なのです」

 

選ばれ続けるために、コストをしっかりかけて人を育てていくこと、って言葉は当たり前のように感じるかもしれないですが、中小企業ってそんなに簡単じゃないから言葉が重い。

その仕組みのためには、安くしろとだけいう顧客とは付き合わないなど顧客もしっかりと選べなくては実現できない。

決して「下請け」とみなされない関係性の構築を重視する姿勢や、収益安定化の仕掛けが他にあるからこそ、こういうことができるんだな。それこそできる経営者というもんだな。

 

こういうかっこいい会社の方が、クローズアップされてほしいなー。

 

クォータニオン(Quaternion)をAframeで基礎から学ぶ

クォータニオン(Quaternion)は3次元空間の回転を表現するものです。 回転軸(3次元のベクトル)と回転角で成り立っているので、4要素があるので四元数(Quaternion)といいます。

A-frameでのrotationはオイラー角という方法で表現されています。これはxyzの3つの軸で回転する方法でわかりやすいのですが、複雑な回転になると使いづらいシーンがあります。

たとえば、すでに傾きのある物体に横回転を加えようと思います。

以下の動画では、左側の直方体をクリックするとオイラー角でY軸を中心に10度づつ回転するようにしました。 右側の直方体をクリックすると、クオータニオンで物体の上下を軸に10度づつ回転します。

f:id:iad_otomamay:20210516220346g:plain
クオータニオン回転とオイラー回転

オイラー角での回転は、Y軸の回転を徐々に増やすという書き方をしました。 今回のサンプルのようにすでに角度の付いた物体への回転は軸のずれたような回転になります。

this.el.addEventListener("click",()=>{
    this.el.object3D.rotation.y += 10;
});

クオーターニオンでの回転は複雑に見えますが、あるクオータニオンと別のクオータニオン内積を取ることで、ある回転した状態(姿勢)に別の回転をくわえた姿勢への移行が簡単に表現できます。

// Y軸のベクトル({x:0 y:0 z:0}から{x:0 y:1 z:0}のベクトルを作り回転させる)
this.yAxis = new THREE.Vector3( 0, 1, 0 );
// クオータ二オンの枠
this.quaternion = new THREE.Quaternion();
// 軸を中心に10度回線させるクオータ二オンを生成。(パイはラジアン角で180度)
this.quaternion.setFromAxisAngle( this.yAxis, Math.PI / 18   );

this.el.addEventListener("click",()=>{
    // クオーターニオンの内積によって現在の回転から、引数の回転を加えた姿勢に移行する。
    this.el.object3D.quaternion.multiply(this.quaternion );
});

上記と同じY軸10度のクオータニオンの生成は、以下のようにも書くことができます。 {x:0 y:1 z:0}のベクトル軸を中心に10度回線させるクオータ二オンをコンストラクタで一発で生成しています。 そしてnormalizeによって単位ベクトルに変換しておきます。単位ベクトルとは方向だけを表して長さを持たないベクトルです。

this.quaternion = new THREE.Quaternion(0, 1, 0, Math.PI / 18).normalize();

他にも、クォータニオン表現ではオイラー角表現で生じるような特異点ジンバルロック)が存在しなかったりと、とても便利な機能をもっていて3D空間で回転を扱うには必須の知識です。

コード全文

<html>
  <head>
    <meta charset="utf-8" />
    <title>quaternion sample</title>
    <script src="https://aframe.io/releases/1.2.0/aframe.min.js"></script>
  </head>
  <script type="text/javascript">
    AFRAME.registerComponent('quaterinon-rotation', {
      init: function () {
        // {x:0 y:0 z:0}から{x:0 y:1 z:0}のベクトル軸を中心に10度回線させるクオータ二オンを生成。(パイはラジアン角で180度)
        this.quaternion = new THREE.Quaternion(0, 1, 0, Math.PI / 18).normalize();

        this.el.addEventListener('click', () => {
          // クオーターニオンの内積によって現在の回転から、引数の回転を加えた姿勢に移行する。
          this.el.object3D.quaternion.multiply(this.quaternion);
        });
      },
    });
    AFRAME.registerComponent('euler-rotation', {
      init: function () {
        this.el.addEventListener('click', () => {
          this.el.object3D.rotation.y += 10;
        });
      },
    });
  </script>
  <body>
    <a-scene>
      <a-text value="click quaternion rotation" position="1 2 -4" color="black"></a-text>
      <a-box quaterinon-rotation position="2 1 -4" rotation="0 0 15" scale="1 1 2" init color="red"></a-box>

      <a-text value="click euler rotation" position="-2 2 -4" color="black"></a-text>
      <a-box euler-rotation position="-1 1 -4" rotation="0 0 15" scale="1 1 2" color="red"></a-box>

      <a-camera>
        <a-entity cursor="rayOrigin: mouse" />
      </a-camera>
    </a-scene>
  </body>
</html>

44歳にもなってプログラミングが楽しくてしょうがない

あと10日ほどで44歳になります。

で、いまはプログラミングが楽しくって、いやーどうしよう。ここ1−2年は人生で一番プログラムを書いたかもしれない。

あたらしいことをやるのも楽しい、VR/ARとかAIとか、ひと昔前ならSFだったことが実現できるのはとってもエキサイティング!

学ぶ中で、昔はわからなかった数学の難しい理論がちょっとづつわかってくるのも嬉しい。ゲームの腕前があがっていくのと同じで、着実に力がついてきてることがわかるのがいい。新たに学ぶことが、実利に繋がるのとても嬉しいしやる気がでる。「勉強」という強いられている感じがなく、探究な感じなのがとても楽しい。

 

今はプログラミングを使ってできることが急激に進化しているから、学べばありとあらゆることを仕事にできる。

 

プログラミングが若手のものだった時代

ちょっと前なら、プログラミングは若手がやる肉体労働で早々に卒業してマネジメントとかをやるのが大人、みたいな雰囲気がありました。自分も30代の頃よくそう言われたけどキャッチアップを続けていてよかった。ほんと。

何度、「そんなことはお前のやることじゃない」と言われたことか、、、

 

「プログラミングは若手のやること」論はわからんでもないです。基本細かい作業なので。

マネジメント力をつけて、たくさんの人を動かして大きな仕事をすることや組織や事業を大きくして社会へインパクトを与えることも面白いとは思います。営業という仕事の、価値を顧客に手渡しできてる感じも面白いですね。ビジネスのいろんな役割、どれもそれぞれ面白いと思える部分はあります。それはいいんだけど、直接手を下せない部分も増えるからもどかしい。大きな仕事の面白さと、手のひらにおさまる仕事の面白さはそれぞれにあると思う。

全部掌握できて、その上で一部を人に任せるのが理想で。いや理想は現実にできるとはいいませんが、目指すなかで落とし所を見つけたいな。

 

周りにもプログラミングする40代多い

10人ぐらい知り合いを思いおこしてみると、同年代のプログラマーも全然活躍しているように思います。CTOとか偉くなってる人も多いんですが、それでもバリバリコード書いてる人が多いです。

近年のソフトウェアは複雑で、一つの専門知識だけでは成り立たないですし、必然的に活躍する世代が上がっているんでしょうね。

35歳定年説とかもありましたね。きっとこれはちょっと前の大企業での話だったんでしょう。たしかに大企業だとマネジメントで大きな仕事を回すことが面白いと思います。でも、大企業含めてどんな企業でも変化を積極的に起こしていかなくてはいけない時代になってきてて、0−1みたいな仕事も多くなっているし時代が変わってる。

今まで、ITはゼネコンに喩えられていて、エンジニアは土方や建築士に例えられていたけど、今は料理人に例えるほうがしっくりくると思う。

腕のある料理人が、途中でマネージャーにならないといけない理屈はないし、自分で店を持つのが良いキャリアパスだなと思う。栄養士やレシピ屋さんになるのもいい。マネジメントは上手い人にまかせるか。

起業とプログラミングの相性

ということでプログラミングは、起業との相性もよい。ソフトウェアを作って売るって話じゃなくても、サービスに付加価値を作るためにも役立つし、業務のプロセスを効率化するためにも役立つ。アイデアを思いついたときに、実行するまでが早いし、そのたびに外部へ投資しなくて済む。起業+プログラミングで仕事をしてると、家族の介護みたいな状況もなんとかこなせてるし、いいことづくめ。

 

唯一の問題は、肩こりに悩まされることだけれど、腕があがるうちはやりたいです。

探究に終わりはないですね。よぼよぼのジジイになってもやっていたい。

 

 

 

a-frame raycasterを使って壁との衝突判定を実装する

a-frame raycasterを使って高低差のある地形に沿って移動する - レベルエンター山本大のブログの続き  

目的

a-frameではWASDキーおよび矢印キーでカメラの位置を移動させることができるものの、壁や物体への衝突判定は自分で作り込む必要があります。

以下の動画のように前進、右移動、左移動、後退のどの方向でも障害物に当たったら跳ね返されるようにすることがこの記事の目的です。

f:id:iad_otomamay:20210504014123g:plain

障害物に当たったら、その場にストップするという仕様も考えられますが、そうすると壁にめり込んだりというトラブルが発生しがちです。 めりこみを避けるためにぶつかったら、ちょっと跳ね返るという処理にしておきます。

準備

前回投稿した以下のプロジェクトを土台として、そこに付け足す形で実装します。 a-frame raycasterを使って高低差のある地形に沿って移動する - レベルエンター山本大のブログ

カメラに四方のレイキャスターを追加

前回、a-cameraにはstand-onというカスタムコンポーネントを設定し、下方向のレイキャスターを設定しました。

同じ仕組みで前方・後方・右側・左側のレイキャスターを設定します。

今回のカスタムコンポーネントは、wall-colliderという名前です。

a-cameraにwall-collider属性を複数設定しているため、__以下に識別子をつけた名前にしています。

この multiple instance の仕組みはComponent – A-Frameを参照してください。

raycasterは、directionによって前後左右に向くように設定します。

<a-camera
    wall-collider__f="raycaster:#raycaster-f"
    wall-collider__b="raycaster:#raycaster-b"
    wall-collider__r="raycaster:#raycaster-r"
    wall-collider__l="raycaster:#raycaster-l"
    stand-on="raycaster:#stand-on-ray"
>
    <a-entity id="stand-on-ray" raycaster="objects: .ground; direction:0 -1 0"></a-entity>

    <!-- 四方のレイキャスターを定義 -->
    <a-entity id="raycaster-f" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:0 0 -1"></a-entity>
    <a-entity id="raycaster-b" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:0 0 1"></a-entity>
    <a-entity id="raycaster-l" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:1 0 0"></a-entity>
    <a-entity id="raycaster-r" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:-1 0 0"></a-entity>
</a-camera>

カスタムコンポーネント

カメラに設定したwall-colliderコンポーネントを定義します。

a-frameのコンポーネントは、a-sceneより先に読み込まれている必要があります。

multiple:trueという属性を指定することで wall-collider__XXXのように、1要素に対して__区切りで複数のインスタンスを設定することができるようになります。

schemaやdependencyは前の記事を参照してください。

AFRAME.registerComponent('wall-collider', {
      schema: {
          raycaster: { type: 'selector' },
      },
      multiple: true, // 複数指定可能
      dependency: ['raycaster'],
}

初期化処理 initの実装

コンポーネントの初期化処理も、前回記事の地面に立つコンポーネントとよく似ています。

  1. カメラに設定したraycasterのいずれかが対象に交差したときにraycaster-intersectionイベントが発生します。

  2. そのタイミングで反応するべきraycasterであることを調べます。

  3. 交差先オブジェクトとの接面を保存しておきます。(次のtickのタイミングで使うため)

  4. 交差が外れたら保存したオブジェクトをクリアしておきます。

evt.detail.intersections[0].face.normalの記述部分だけが、前回と異なります。 交差オブジェクトとの接面(face)を取得して、nomalizeして保存しておくというコードです。

nomalizeすることで、ベクトルから距離の情報を取り除き、向きを表す単位ベクトルに変換することができます。 つまり、"0 1 0" や"0 0 -1"のようにxyzを0,1,-1だけで表すベクトルに変換されます。

init: function () {
    this.el.addEventListener('raycaster-intersection', (evt) => {
        console.log(evt.target);
        if (evt.target !== this.data.raycaster) return; // 対応するレイキャスターのみ反応
        this.face = evt.detail.intersections[0].face.normal;
    });

    this.el.addEventListener('raycaster-intersection-cleared', (evt) => {
        if (evt.target.id !== this.data.id) return;
        this.face = null;
    });
},

tickの実装

tickでは、faceが保存されていれば対象オブジェクトと衝突しているので、跳ね返すのですがthree.jsのメソッドを使えば、大変簡単な記述で実現できます。以下の処理だけ。

tick: function () {
    if (!this.face) return;
    this.el.object3D.position.add(this.face.multiplyScalar(0.5));
},

一つ一つ説明します。 this.faceが登録されていなければ、衝突していないので処理しないとします。

次にthis.faceが登録されている場合です。 カメラの要素に設定したコンポーネント内であるため、this.elはカメラのaframe要素となります。そのカメラ要素からobject3Dプロパティでthreejsのオブジェクトを取り出します。

three.jsのadd()メソッドは、ベクトル同士の和(足し算)を計算してくれるものです。

this.faceに保存された接面のベクトルは、衝突方向と反転したベクトルを持っているため、カメラの位置(position)に反転ベクトルを足し算します。add メソッドは呼び出し元のベクトルに計算結果を反映させるため、跳ね返してくれるというわけです。

mulitplyScalarはベクトルに対して単一の値を掛け算できるメソッドで、これで跳ね返りの距離を調整します。

(あまり小さい数にすると、衝突後もオブジェクトをすり抜けてしまうので注意が必要です)

three.jsのおかげでとっても短いコードで実現できましたね。

全てのコード

 

<html lang="ja">
  <head>
    <meta charset="UTF-8" />
    <meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=edge" />
    <meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0" />
    <script src="https://aframe.io/releases/1.2.0/aframe.min.js"></script>
    <title>Aframe example Stand on Ground</title>
  </head>

  <script type="text/javascript">
    /**
     * 地面に立つためのコンポーネント(前回記事の範囲)
     */
    AFRAME.registerComponent('stand-on', {
      schema: {
        raycaster: { type: 'selector' },
      },
      dependency: ['raycaster'],
      init: function () {
        this.el.addEventListener('raycaster-intersection', (evt) => {
          if (evt.target !== this.data.raycaster) return; // 対応するレイキャスターのみ反応
          this.raycaster = evt.target.components.raycaster;
          this.target_el = evt.detail.els[0];
        });

        this.el.addEventListener('raycaster-intersection-cleared', (evt) => {
          if (evt.target !== this.data.raycaster) return;
          this.raycaster = null;
          this.target_el = null;
        });
      },

      tick: function () {
        if (!this.raycaster || !this.target_el) return;
        const item = this.raycaster.getIntersection(this.target_el);
        this.el.object3D.position.y = item.point.y + 1.7;
      },
    });

    /**
     * 前後左右のヒット(今回記事の範囲)
     */
    AFRAME.registerComponent('wall-collider', {
      schema: {
        raycaster: { type: 'selector' },
      },
      multiple: true,
      dependency: ['raycaster'],
      init: function () {
        this.el.addEventListener('raycaster-intersection', (evt) => {
          console.log(evt.target);
          if (evt.target !== this.data.raycaster) return; // 対応するレイキャスターのみ反応
          this.face = evt.detail.intersections[0].face.normal;
        });

        this.el.addEventListener('raycaster-intersection-cleared', (evt) => {
          if (evt.target.id !== this.data.id) return;
          this.face = null;
        });
      },

      tick: function () {
        if (!this.face) return;
        this.el.object3D.position.add(this.face.multiplyScalar(0.5));
      },
    });
  </script>
  <body>
    <a-scene>
      <a-assets>
        <a-asset-item id="envGlb" src="./Crater.glb"></a-asset-item>
      </a-assets>

      <a-camera
        wall-collider__f="raycaster:#raycaster-f"
        wall-collider__b="raycaster:#raycaster-b"
        wall-collider__r="raycaster:#raycaster-r"
        wall-collider__l="raycaster:#raycaster-l"
        stand-on="raycaster:#stand-on-ray"
      >
        <a-entity id="stand-on-ray" raycaster="objects: .ground; direction:0 -1 0"></a-entity>

        <!-- 四方のレイキャスターを定義 -->
        <a-entity id="raycaster-f" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:0 0 -1"></a-entity>
        <a-entity id="raycaster-b" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:0 0 1"></a-entity>
        <a-entity id="raycaster-l" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:1 0 0"></a-entity>
        <a-entity id="raycaster-r" raycaster="objects: .collidable; far: 1; direction:-1 0 0"></a-entity>
      </a-camera>

      <a-gltf-model position="0 0 0" src="#envGlb" class="ground" animation-mixer=""></a-gltf-model>

      <a-sky color="skyblue"></a-sky>
      <a-box color="red" class="collidable" position="0 1 -4" scale="2 2 2"></a-box>
    </a-scene>
  </body>
</html>

a-frame raycasterを使って高低差のある地形に沿って移動する

目的

AframeのカメラはデフォルトでWASDキーや矢印キーによる操作ができますが、高低差のある地形に沿って移動はしてくれません。
また、階段のようなモデルも登っていきたいところですね。
Aframeで地面に指定したモデルの地形に添って移動できるようにします。

下記の動画では、WASDでカメラを動かしてクレーターを登っていき、最終的に高い位置から見下ろします。

f:id:iad_otomamay:20210503123232g:plain

これを実現できるようにすることがこの記事の目的です。

シーンの設定

とりあえず、モデルや空や、目印になる赤いボックスを置きます。
モデルはMozilla の Spoke https://hubs.mozilla.com/spoke からダウンロードしたクレーターです。

<a-scene>
  <a-assets>
    <a-asset-item id="envGlb" src="./Crater.glb"></a-asset-item>
  </a-assets>

  <a-gltf-model position="0 0 0" src="#envGlb" class="ground" ></a-gltf-model>

  <a-box color="red" position="0 1 -4" scale="2 2 2"></a-box>

  <a-sky color="skyblue"></a-sky>
</a-scene>

カメラの設定

カメラにraycasterを設定。raycasterは「objects:」属性にCSSクエリセレクタを設定することで、交差イベントを発火するオブジェクトを決められます。
このサンプルではCraterモデルのclassに「ground」を設定したので、Craterの3Dモデルに交差するとイベントを発火します。
またraycasterのdirectionプロパティの中の yの値を -1 にすることで下方向のraycasterとなります。
directionは、Vector3型となっていて"0 0 0"のようにスペース区切りの3つの値を設定することで x y zを指定できます。

<a-camera stand-on="raycaster:#stand-on-ray">
  <a-entity id="stand-on-ray" raycaster="objects: .ground; direction:0 -1 0"></a-entity>
</a-camera>

aframeのカスタムコンポーネントを作成

次にAframeのコンポーネントを作成します。「stand-on」と名付けました。schemaでは、このコンポーネントに対する外部入力プロパティを設定することができます。raycaster という名前は任意でありraycasterコンポーネントとは無関係なので別の名前にした方がわかりやすいかもしれません。selecter型にしておくことで、CSSクエリセレクタを入力として受付て、内部的にはDOMの参照として利用することができます。

カメラに設定するraycasterは複数つくることがあり得るので、このコンポーネントが使うraycasterは、どれなのかを指定できるようにしておきます。(今後記事で壁との衝突判定も記載しようと思います)

AFRAME.registerComponent('stand-on', {
  schema: {
    raycaster: { type: 'selector' },
  },
  dependency: ['raycaster'],
}

init の処理

Aframeコンポーネントの初期化(init関数)時に、raycasterが交差したことを表すイベント(raycaster-intersection)をリッスンします。
カメラに複数のraycaster(例えば壁との衝突判定など)を設定していた場合、raycaster-intersectionは全てのraycasterで反応します。
そのため今発生しているイベントがstand-onに対応した下向きのraycasterの交差であることを確認します。

schemaで指定されたraycasterで発生した時だけ、raycasterと交差先のオブジェクトを保存しておきます。*1

同じく交差イベントがクリアされたタイミング(raycasterの交差が外れたタイミング)で、保存していたオブジェクトを削除します。

init: function () {
  this.el.addEventListener('raycaster-intersection', (evt) => {
    if (evt.target !== this.data.raycaster) return; // 対応するレイキャスターのみ反応
    this.raycaster = evt.target.components.raycaster;
    this.target_el = evt.detail.els[0];
  });

  this.el.addEventListener('raycaster-intersection-cleared', (evt) => {
    if (evt.target !== this.data.raycaster) return;
    this.raycaster = null;
    this.target_el = null;
  });
},

raycaster-intersectionのEvent

raycaster-intersectionのEventの主なプロパティ

event
	.detail
		.intersections[n]	交差を表すオブジェクト配列
				.face 交差面
				.distance 距離
				.object	交差先Treejsオブジェクト
				.point	交差した点のVector3座標
				.uv	交差した点のVector2座標
		.els	交差先オブジェクトのDOM
	.target	反応したレイキャスタDOM

tickの処理

tickでは、raycasterと交差先オブジェクトが保存されている(交差イベントが発生して交差が外れるまで)の間ずっと、getIntersection()を使って最新の交差位置を取得します。これでカメラの配下にある地形を常に読み取ることになります。
最新の交差位置のy座標をカメラの高さに合わせます。1.7を地面からの視点の高さとしました。この1.7もschemaで読み込んでもいいですね。

tick: function () {
  if (!this.raycaster || !this.target_el) return;
  const item = this.raycaster.getIntersection(this.target_el);
  this.el.object3D.position.y = item.point.y + 1.7;
},


最終的なコードは以下です。

<html lang="ja">
  <head>
    <meta charset="UTF-8" />
    <meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=edge" />
    <meta name="viewport" content="width=device-width, initial-scale=1.0" />
    <script src="https://aframe.io/releases/1.2.0/aframe.min.js"></script>
    <title>Aframe example Stand on Ground</title>
  </head>

  <script type="text/javascript">
    /**
     * 地面に立つためのコンポーネント
     */
    AFRAME.registerComponent('stand-on', {
      schema: {
        raycaster: { type: 'selector' },
      },
      dependency: ['raycaster'],
      init: function () {
        this.el.addEventListener('raycaster-intersection', (evt) => {
          if (evt.target !== this.data.raycaster) return; // 対応するレイキャスターのみ反応
          this.raycaster = evt.target.components.raycaster;
          this.target_el = evt.detail.els[0];
        });

        this.el.addEventListener('raycaster-intersection-cleared', (evt) => {
          if (evt.target !== this.data.raycaster) return;
          this.raycaster = null;
          this.target_el = null;
        });
      },

      tick: function () {
        if (!this.raycaster || !this.target_el) return;
        const item = this.raycaster.getIntersection(this.target_el);
        this.el.object3D.position.y = item.point.y + 1.7;
      },
    });
  </script>
  <body>
    <a-scene>
      <a-assets>
        <a-asset-item id="envGlb" src="./Crater.glb"></a-asset-item>
      </a-assets>

      <a-camera stand-on="raycaster:#stand-on-ray">
        <a-entity id="stand-on-ray" raycaster="objects: .ground; direction:0 -1 0"></a-entity>
      </a-camera>

      <a-gltf-model position="0 0 0" src="#envGlb" class="ground" ></a-gltf-model>

      <a-box color="red" class="collidable" position="0 1 -4" scale="2 2 2"></a-box>

      <a-sky color="skyblue"></a-sky>
    </a-scene>
  </body>
</html>

*1:Aframe の1.2.0の時点では、交差イベント(raycaster-intersection)は、交差が開始したタイミングでしか発行されません。状態のリフレッシュはtickで実装します。tickで使うためにraycasterと交差先オブジェクトを保存しておきます。

2000年代オブジェクト指向は絶対の正義だった。つまり僕は洗脳を経験している

私がIT業界の片隅に所属をし始めた2000年ごろ、Javaエンジニアはスーパースターだった。Javaエンジニアを名乗るということは、秘奥義オブジェクト指向を習得していることに他ならないからだ。

 

オブジェクト指向こそ正義」だった。

 

Javaオブジェクト指向を身につければ、20年は食っていけると言われたものだった。

あれから20年。たしかにJavaオブジェクト指向で20年は食えた。が、もはやオブジェクト指向は絶対でも正義でもない。

 

僕は、IT講師として新入社員にJavaを教える仕事もしているが「オブジェクト指向こそ正義」と無垢な生徒達に教えなければならない時に、苦痛を覚えるようにすらなってしまった。

 

2000年代から、新人教育のテキストは変わっていない。継承は積極的に使っていくべきで、オブジェクトは現実世界を模した仮想現実世界をコンピューター内に生み出す技術とされている。Strutsだけはようやく姿を消した。

 

 

2000年前半、

これからはオブジェクト指向だよ。当時の上司は言っていた。

 

 

オブジェクト指向を初めて学んだ時、理解不能だったのは、変数やループといったプログラミングらしい構文から一転して、様々な現実の例え話が登場することだった。オブザーバーは軍師で諸葛孔明なのだと書かれた雑誌を読んで先輩に質問したときに「そんなクソ本読むな。GOF(GangOfFour)を読め」と叱責された。しかし、GoFデザインパターンという本を知り、読み、さらに訳のわからない泥沼にハマったきもちになった。

 

オブジェクト指向を習得したと実感するためには、結局プログラムを書いて読むしかなかった。Sessionの状態管理をラップするクラスを書いたときだった。訳もわからずこねくり回した労力の割りに成果は少ないのだが、これぞオブジェクト指向だ!と実感が得られた。

 

 

それから、オブジェクト指向は自分の中でソフトウェア開発における「正義」だった。

 

 

当時SESでいろんな現場を行き来する末端のプログラマーだったが、「この現場はクソだ。コードにオブジェクト指向らしさが全くない。真理を知らないアホがリーダーをやってるんだ。」とぼやいていた。

自分たちだけは、日本のSE業界をオブジェクト指向を中心としたイケてる世界に変えていこう。

所属していたのは零細なSES企業だったが、オブジェクト指向的な技術力で盛り立てて、大手のイケてない現場でブイブイ言わせてやろう!と心のそこから思っていた。

 

 

薄々は感じていた。

 

 

インターフェイスの分離やデザインパターンを使わない現場に入った時、IDEがコードのジャンプを適切に実行してくれることの楽さを感じた。

しかし、その現実に目をつぶって、わざわざ全部をインターフェイスで分離して、追いかけにくいコードに書き換えた。これこそがオブジェクト指向ですよ、すばらしいでしょう。と。。

 

ダサい手続き型は残らずこの手で駆逐してやる

オブジェクト指向的にリファクタリングすることが、正義だと思っていた。 

 

 

自分がプロジェクトのリーダーや技術のリーダーになる頃には、徐々に気付き始めていた。

Webのサーバーサイドで隆盛を誇っていたJavaだが、実のところWebサーバーサイドの現場のコードにオブジェクト指向が必要な部分などそう多くはなかった。

 

フレームワーク部分では、多少オブジェクト指向的なテクニックは有効だったが、大半のコードは業務の流れを記述し、DBアクセスのフローを制御するだけのもので、無駄に継承やデザインパターンを駆使しているコードはメンテナンスしにくいだけのものだった。

  

 

その頃には、駆け出しエンジニアの後輩から

「現場ではオブジェクト指向のテクニックを十分に使わせてくれません、せっかく学んだオブジェクト指向のテクニックを駆使するにはどうしたらいいですか?」的なことを聞かれて、どうにも返答に困るようになっていた。

 

なぜなら要らんからだ。

 

現場のリテラシーが低いだけとは言い切れない。と思うようになってきていた。

 

 

「世の中を変えたければ偉くなれ」程度のアドバイスでお茶を濁した。

正義は時代とともに形を変える。

 

 

オブジェクト指向は、使えると便利なシーンは確かにある。

グローバル変数を細かくしてくれた。

型を自分で作れるのはとても嬉しい。

文字列配列のindex 0はIdで、index 1 は氏名で、、、というプログラムを書いていた世界には戻る必要はない。

しかし、絶対の正義というほどのことではない。指向にするほどのものでもない、ただの便利な言語機能だ。

 

 

しかし、2000年代は絶対の正義と言えるレベルの宗教だった。

オブジェクト指向が、分析や設計にまでおよぶ広大な宗教だったから、部分的な不都合などは些末なことだった。

 

 

僕は、自分がようやく壁の中に逃げ込んだだけの人類に過ぎず、壁の外には広大な世界が広がっていることを知った。

 

 

生まれてこのかた、自分は正常なリテラシーをもった現実的な考え方の人間であり、たくさんの情報源にふれているので何者かに洗脳されることはない、と思っていた。

 

しかし、事実として僕は、オブジェクト指向絶対教に洗脳されたことがあり、

 

いま、新しい宗教に洗脳されている人を見たとしても 

それが悪だとか、自分が洗脳されていないとか言い切ることはできない。