レベルエンター山本大のブログ

面白いプログラミング教育を若い人たちに

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10年泥は正しい。入ってすぐに自分のやりたいことがやりたいなんて甘い。だけどIT業界には依然として夢はある。


10年前、僕は3流文系私大をギリギリで卒業して、当時花形だったこの業界に入った。

「自分がやりたいことがやれそうだ。」という志望動機が、今思えばいかにも学生の発想だ。


その時、初めて見よう見まねで作ったのはHTMLとJavaScriptで書いた、

どうしようもないWebページだった。

「Webゲームが作りたい」とか一瞬思っていたのだが、

苦心してできたのは思い出すのも恥ずかしいような代物だった。

あの当時の「やりたいこと」など、今となっては微塵もやりたくない。



結局のところ、やりたいことと言っても当時の僕の脳みそは、

世間を知らない低次元の脳みそだし、やれる実力もない。

運よく始められたとしても継続ができないのは間違いなかった。



物事をはじめるのはたやすく、継続するのは難しい。

なぜなら物事にはトラブルが付き物で、簡単なことをクリアし続けると必ず難しい部分が残るからだ。

むやみに作り始めたオープンソースソフトウェアや、

むやみに取り組んだテストファーストラクティスが続かないのと一緒で、

一通り失敗した後、上手くこなせる実力がついてこそ、やりたいことがやれるんだと思う。

最近の学生さんが「やりたいことがやれる企業に就職したい」というのは正しいが、どっちみち「下積み時代ってあると良いよ」と思う。



ちょうどこの4月で僕は仕事を始めて10年になる。

この10年は、輝かしい泥試合の連続だった。

「SIは、寝技に持ち込んでからが勝負」である。

寝技に持ち込んでも、判定で勝てるぐらいが面白いと思えるようになった。

トラブルは必ずあるものとして、トラブルに直面しても平然と乗り越えられる力はついた。



最近ではSI企業の経営に携わっていて、エンジニアと経営のバランスをとる方法が、なんとなく見えてきたように思う。

さぁ、いよいよ自分のやりたいことをやって儲けてみようじゃないかと思えるようになってきた。

10年の下積みを経て、これからが本当にやりたいことをやるフェーズなんだと考えてる。


ところで、僕の弟は福井県で包丁職人をやっているが、

彼の業界で権威のある資格「伝統工芸士」は、実務経験12年で、ようやく資格への挑戦権が得られる。

12年経つまでは1人前と呼ばれないということか。

18歳で業界入りした弟は、去年30になってその挑戦権を得た。これからが勝負というところだ。



それに比べてIT業界は参入の敷居が低く、食っていくだけなら2〜3年の経験もあれば、しばらくはなんとか食っていける。


しかし、結局人月を超えて創造性で価値を提供するとなると

やはりざっくり10年ぐらいは色々経験しないとできないのではないかと思う。

それこそ、営業から製造、テストまでできるようになってこそ、

価値を創造して、それを売り物にすることができるのではないか。


30歳からは、これまで10年で培ってきた技術をベースに

価値を生み出す仕組みを作ってやっていくしかないのだ。

「やっていくしかない」などと、やや悲観的な言い方をしてしまったが、

やりたいことをやる環境や準備が整った段階であるということなのだ。



10年たって、35歳の定年とやらが間近になったときに、

新人の気持ちになって「さぁこれから、やりたいことをやれる」と思えば35歳定年説も悪くない。


ITの世界は、設備投資もほとんど無しに、やりたいことをやれる業種であることから

やはり夢のある業界だと思えて、よろこばしい。


他人の芝が青く見えて、この業界は駄目だと嘆かわしく思えることも多いけど、

やっぱり面白いし、夢はあると思う。