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エンジニアの為の日本経済入門書

エンジニアだから、政治や経済の話に興味なんて無い、無くてもいいという話を社内の何人かから聞きました。


たしかに、自分の業務には無関係だし、
知らなくても今の日本では生きてはいけるから、
そういってしまうのは無理もないかもしれませんが、

30代、40代になって、役職が上がってきたとき
外部の人と話をすることも多くなります。
きちんとしたビジネスマンとして、政治・経済の常識すら無いのは
とても恥ずかしい思いをすることになります。


また、上流工程やマネジメント、経営にかかわることになれば、
市場の動きを読んで判断を迫られる場面も多くなります。
そのときになって、付け焼刃で勉強してもダメです。


プロとして恥ずかしくない技術力をつけるのが第一ですが、
それを一通り終えた上流へ向かっていこうという人は、
エンジニアであることはもとより、ビジネスマンとして幅広く知識を得て行ってほしいものです。


特に、経済の知識は重要です。
上流工程になるほど、相手は経営者など経済活動を主体的に行う人になります。
こういった相手からの信頼を得るには、経済の話題についていけないといけません。
そして、今の経済は政治と無関係ではないのです。


ニュースで話題になっている、政治と経済のワードが何を指すか
ぐらいは答えられるのが、当たり前だと思います。



では、経済を勉強するにはどうすればよいのでしょうか?


偉い人からは、「日経新聞を読め」なんて言われますが、
日経新聞を読んだところで、表層に過ぎず。
本質がわかっていない我々にとっては、芸能ニュースとさほど変わりません。


エンジニアの世界で言えば、何も知らない状態で
「オレンジニュースや@ITだけは読んどけ」
みたいなもんで、それはそれで勉強になるけど、
わかったつもりになるだけのことです。


それから、簿記の資格を勉強すれば経済がわかるというものでもありません。
世の中の流れをちゃんと知るべきです。



こういう、未知の世界を勉強するときのコツのひとつは、人物に注目することです。


Javaなら、ジェームズゴズリンとかロッドジョンソンとかヤスオヒガとか。。
人の発言や歴史、思想に注目すると、本質的なことが追いかけられます。



ということで、日本経済について最近、私が注目してるのは、
高橋洋一という人です。


この人は、「霞ヶ関埋蔵金」を発見した人として、メディアでも取上げられましたが、
とても面白い経歴とキャラクターの人です。


「東大法学部出身でなければ人にあらず」の極め付きの学閥があります。
高橋さんは、その財務省で変人枠で入省した「東京大学理学部数学科卒」の人です。


もともと数学者になりたかったらしく、官僚というものに執着がありませんでした。
数学科卒だけにとても論理的で、話がわかりやすい人です。


霞ヶ関埋蔵金を発掘した人として知られていますが、
郵政民営化などでも、竹中大臣の懐刀として活躍し、いろいろな仕事を成し遂げています。



以下の本では、この高橋さんが官僚機構の中で立ち回る姿がとても痛快です。

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白

さらば財務省! 官僚すべてを敵にした男の告白


たとえば、エンジニアとして興味を引くのは
旧大蔵省時代に行った、「ALM = Asset Liability Management(資産負債総合管理)」システムの構築の話です。
ALMとは、資産と負債の変化に対して金利リスクを考慮した資金運用のあり方を数理的に決定する手法で、
金融自由化が本格化した1990年代初めに、多くの金融機関で導入されたそうです。


このシステムを、大蔵省が保有している年金や郵便貯金という莫大な資金の運用に用いる必要があり、
外注してつくるなら2〓3年 10〓20億ほどコストがかかるとのことでした。


よっぽど大手のSIerでも引き受けるのをためらうほどの巨大プロジェクトじゃないでしょうか。


これを、わずか3ヶ月3人という驚異的なスピードでシステムを構築したということです。

なぜこんな離れ業ができたのかというと、

2年前にすでに、半分趣味であらかたシステムの原型をくみ上げていたからである。

エンジニアとしても、興味深い人だなとおもったエピソードでした。



この本は、ハードカバーなので敷居が高いという人には、以下の文庫本もお勧めです。
対話形式なので読みやすいです。


埋蔵金の話や、郵政民営化の舞台裏、上げ潮は、財政タカ派といった、
現在の政治経済に通じる話題が、舞台裏から詳しくわかります。

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)